朝のおむかえ

くーちゃんは、夜があける前に目を覚ましました。
寝室は、まだまっくらで、ママもとなりでぐっすり眠っています。
いくら呼んでも、揺すっても、起きてくれません。
朝まであとどれくらいかなあ。
そう思いながら、くーちゃんはカーテンをあけました。
外はまだまっくらでしたが、うちの前の道を、ニワトリたちが並んで歩いていました。
ニワトリたちは、それぞれにラッパや太鼓を抱えていました。
「おはよう、ニワトリさん!」
窓をあけて、くーちゃんはあいさつしました。
「まだ夜ですよ」とニワトリのひとりが注意しました。
「こんばんは!」と、くーちゃんはやりなおしました。
するとニワトリたちは足をとめ、くーちゃんに向かって「しーっ」と注意しました。
「夜に大きい声を出しちゃいけません」
「ごめんなさい」と、くーちゃんは小さく謝りました。
それから「どこに行くの」と、やっぱり小さく聞きました。
「太陽を起こしに行くんですよ」と先頭に立ったニワトリが答えました。
「そうしないと、朝にならないでしょう」と、二番目のニワトリが付け足しました。
くーちゃんは、ニワトリたちについていくことにしました。
おひさまの家にあがり、寝室に行くと、おひさまはベッドでぐっすりと眠っていました。
ニワトリのひとりが、「せーの」と声をかけると、みんなでラッパや太鼓で大きな音を鳴らしました。
くーちゃんは、思わず耳をふさぎました。
おひさまが片方の目をちらりと開けました。外がすこし明るくなりました。
だけど、おひさまは、またすぐに目を閉じました。
さっきより、もっと暗くなったようでした。
「わたしね、いいことしってるよ」と、くーちゃんは言いました。
「朝はね、りんごジュースをのむと、ぴかっ、と目が覚めるの」
「そうなのね、じゃありんごジュースを呼んできましょう」
ニワトリのひとりが外に駆け出していき、りんごジュースを連れてきました。
りんごジュースはまだ眠そうに目をこすっていました。
「だめだよ、コップがないと」
くーちゃんに言われて、またべつのニワトリが走ってコップを取ってきました。
「あと、ストローもないと、寝てるのに飲めないでしょう」
ちょっと怒ったふうに、くーちゃんは言いました。
ストローも用意ができて、りんごジュースをコップに注ぎ、おひさまに飲ませました。
ごくごくと、いきおいよく飲んでしまったおひさまは、
いちども目を開けることなく、さっきより気持ちよさそうに眠っていました。
「きょうは、いちだんとてごわいわ」とニワトリはためいきをつきました。
「そうだ!」とくーちゃんは大きな声をあげました。
だけどこんどは、だれも注意しません。
くーちゃんは、おおいそぎで外に走っていきました。
「ママ、こっちこっち」
なんとくーちゃんは、ママを連れてきたのです。
「これでぜったい起きるよ、ママ、起きないと怖いんだから」
ニワトリたちも、それなら安心だ、とよろこびました。
だけど話を聞いていたママは大きなあくびをして「ママもまだねむい」と言いました。
がっかりしたニワトリたちは、もういちど、ラッパと太鼓でやってみることにしました。
ジャーン!
「うるさーい!」とママが怒りました。
「そんな音だからおひさまも起きないんでしょ。もっと、起きたくなる音楽にしなくっちゃ」
そう言ってママは歌いはじめました。
あかるくて、たのしい歌でした。
ニワトリたちがママの歌にあわせてラッパと太鼓を鳴らすと、
だんだん、外が明るくなってきました。
「あ、おひさま、目あけた! わらってる!」
くーちゃんがうれしそうにいいました。
次の日も、その次の日も、そのまた次の日も、朝の光はすっきりとすみわたっていました。
雨が降った日には、くーちゃんとママとニワトリたちで、あたらしい、たのしい歌を練習するようになりました。
さあ、あしたのお天気は、どうなるでしょうか。

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