ドアの神様

ドアの神様がドアの角に足をぶつけて、ケガをしてしまいました。
そこで神様は近所の薬屋に出かけて、「ばんそうこうをください」といいました。
薬屋のおじさんは「どうりで!」と大きな声でいいました。
前の夜から、薬屋のトイレのドアが、開けたり閉めたりするたびに、おかしな音を鳴らすのです。
「それがね、神様、ぴんぽろぴんぽろ鳴るんですよ」
薬屋のトイレに行って、ドアを開けてみると、ほんとうに、ぴんぽろぴんぽろと鳴りました。
「うちの子が、よろこんでね、なんかいもなんかいも開け閉めするもんだから」
そういって薬屋は特別なばんそうこうを取り出してきました。
「これね、すごくよくきくから、はったらすぐになおりますよ」
神様はいわれたとおり、特別なばんそうこうをはりました。
つぎの日、薬屋のいうとおり、ケガはずいぶんよくなっていました。
薬屋にいって、「ほんとうによくきくばんそうこうですね」と神様はいいました。
「でしょう? おかげでうちのぴんぽろも、音がちいさくなってきましたよ」
神様はまた、特別なばんそうこうを買ってかえりました。
つぎの朝、おもてでなにやら声が聞こえて、神様は目をさましました。
薬屋の声です。薬屋は、ずいぶん怒っています。
窓からそっとのぞいてみると、神様の家の玄関の前に、薬屋と、ちいさな女の子がいます。
どうやら、女の子が玄関の前におおきな石を置いたようで、
それを見つけた薬屋がそんなことをしてはいけないと怒っていました。
「おまえはトイレがぴんぽろ鳴るのが楽しいかもしれないけど、神様はこまるんだ」
神様は、なるほど、とおもいました。
薬屋のむすめは、ドアの音が気に入って、神様のケガがなおらなければいいと考えたのです。
なんだかもうしわけない気持ちになった神様は、その日も薬屋にいきました。
それから、トイレの前に立つと、ドアを殴って壊してしまいました。
薬屋も、薬屋のむすめも、おどろいて口をぽかんと開けていました。
神様は、ふたりの前でムニョムニョと呪文をとなえました。
すると、床から新しいドアがニョニョニョとはえてきました。
「きみが開け閉めするときにだけ、ぴんぽろ鳴るドアにしてあげたよ」と神様はいいました。
さっそく、女の子はドアを開けました。ぴんぽろ。閉めました。ぴんぽろ。
薬屋のおじさんがドアを開けても、閉めても、うんともすんとも言いません。
「すごいすごい!どうしてこんなことできるの!」と女の子はすっかりうれしそう。
神様は答えました。
「そりゃ、ドアの神様だからね」

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