こぶとりじいさんたち

鬼にコブをくっつけられたいじわるじいさんは、ひいこらと村にかえりました。
そしてまっさきに、やさしいおじいさんの家にいきました。

「おいおい! どうしてくれるんだ! コブがふたつになったじゃないか!」
やさしいおじいさんも、びっくりです。
いじわるじいさんのほっぺには、みぎにも、ひだりにも、おおきなコブがぶらさがっています。

「こりゃ、わるいことをした。わたしもいっしょにおねがいしてみるから、あやまりにいこう」
ふたりは山のずっとおくへとはいっていき、鬼たちがお酒をのんでいるところにたどりつきました。
やさしいおじいさんは、いちばんえらい鬼に話しかけ、いじわるじいさんのコブをとってくれないかとたのみました。
すると鬼は、こういいました。

「おまえのほっぺにもどしてもいいのか?」
「いやあ、それは……」
やさしいおじいさんも、コブはほしくありません。
「じゃあ、そっちのおまえ」と鬼は、いじわるじいさんをゆびでさしました。
「もういっかい、おれたちをたのしませてみろ」
鬼たちにぐるりとかこまれたいじわるじいさんは、ふるえながらこたえました。
「う、うたいましょう」

いじわるじいさんは、きんちょうに声をふるわせながら、うたいはじめました。
さいしょのうちこそ、鬼たちは笑っていましたが、しかしだんだん、おじいさんの歌は、じょうずになっていきました。
きんちょうも、こわかったこともわすれて、ただただ、歌います。
おどりはへたでも、歌は、とってもじょうずだったのです。
いつのまにか、鬼たちはなみだをこぼしていました。
いじわるじいさんが歌いおえると、鬼たちはおおきなはくしゅをおくりました。

「おい、じいさん、ずいぶんたのしませてくれたじゃないか。おれいに、なんでもひとつ願いをかなえてやろう」
「なんでも!?」
いじわるじいさんはびっくりしました。
「そうさ、どんなねがいでもかなえてやる」と鬼がわらいます。「コブをとるのもいいし、おおがねもちにしてやってもいい。たべきれないくらいのごちそうをまいにちとどけてやってもいいぞ。さあ、どうする」

いじわるじいさんは、なやみました。
コブをとってもらうのはうれしいけれど、それよりおかねをたくさんもらったほうがずっとしあわせにくらせるのではないか、考えたからです。
「じゃ、じゃあ、おおがねもちに……」
「だめじゃ!」やさしいおじいさんが、いじわるじいさんの口をふさぎました。
「コブを! コブをふたつともとってあげてください!」とやさしいおじいさんがさけびました。

かってにきめられて、いじわるじいさんは怒ろうとしましたが、それよりはやく鬼がゆびさきでコブをふたつとも切りおとしてしまいました。
すると、鬼はこういったのです。
「おい、じいさん、やさしいともだちをもってよかったな。このコブをつけたままだったら、あんた、すぐに体がぼろぼろになるところだったんだぞ。おおがねもちになっても、それじゃあ、つかいみちもないよなあ」
「な、なんだって」いじわるじいさんは、その場にすわりこみました。

それから鬼たちは、やさしいおじいさんといじわるじいさんに、ふたりで歌っておどるよういいました。
「いやあ、あんたたちには楽しませてもらった。よし、いいものをみやげにやろう」
鬼は切りおとしたふたつのコブを手に、おまじないをとなえました。
すると、ふたつのコブはたくさんの宝にかわりました。

宝をかかえて村にかえったふたりのおじいさんは、じぶんたちだけしあわせになってもうれしくないと思い、村のみんなに宝をわけました。
それでみんなしあわせにくらしたそうです。

Share Button