からあげころころ

ある日、おじいさんが山でお弁当をあけると、
からあげがひとつ、転げ落ちてしまいました。

ころころころがっていくからあげを
おじいさんはがんばって追いかけましたが、
小さな穴に落っこちてしまいました。

すると、小さな穴から声が聞こえてきます。
どうやら、穴のなかにくらすネズミたちのようです。

おいしいな おいしいな
こんなにおいしいからあげはじめて

それを聞いておじいさんはからあげをもうひとつ
穴の中に落としてあげました。

つぎの朝、おじいさんが玄関をあけると、
とっても長い階段が置かれていました。
手紙もいっしょに置いてあって、
からあげありがとう、と書いてありました。

おばあさんも起きてきて、びっくり。
こんな階段、どうするんですか、と、
すこし怒った様子です。

せっかくもらったんだから、のぼってみるか。
そういっておじいさんは階段をのぼっていきました。
どこまでいっても、なかなか終わりが見えません。
山を追い越し、雲をつきぬけ、空が暗くなります。
とうとうお月様にやってきました。

そこにはたくさんのウサギたちがいて、
おじいさんを歓迎しました。

月から見下ろす景色はすばらしく、
なるほどこれがネズミの御礼かと思いました。
すると、ウサギがこう言いました。

おじいさん、からあげは?

とってもおいしいからあげをもらえる、と、
ネズミたちから教わったそうです。

おじいさんは階段を下りて家にもどり、
おばあさんにたくさんのからあげを作ってもらいました。
そうしてまた階段をのぼり、
山を追い越し、雲をつきぬけ、空が暗くなって、
月にとうちゃくしました。

ウサギたちはおおよろこび。
おじいさんも、ほっとひといき。

それからというもの、
どんなに曇りの夜でも、大雨の夜でも、
おじいさんとおばあさんの家だけは
満月が照らしてくれるようになったそうです。

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